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法人の資産は、本当に存在していますか?/病院経営の指標・読み方Vol.12

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

貸借対照表、特に資産については、詳しく内容を確認されることをお勧めします。法人の資産が正しく反映されていない可能性があるからです。

法人の資産が正しく反映されていない可能性がある

経営者層の皆様は、毎月の損益計算書などを見て業績をご確認されるかと思います。そして課題や改善策を議論し、より良い経営のために舵を切られているでしょう。

では、貸借対照表についてはどうでしょうか。貸借対照表は、その時点での財政状態を示したものです。これまでの経営の積み重ねを反映したものとも言われます。

貸借対照表は決算のタイミングで確認している、という方も多いかと思います。しかし、流動比率や自己資本比率等など指標の確認だけに終わっていないでしょうか?

貸借対照表、特に資産については、詳しく内容を確認されることをお勧めします。法人の資産が正しく反映されていない可能性があるからです。

法人の資産が正しく反映されていない可能性がある

そんなことがあるのか?と思われるかもしれません。しかし、記載されている資産が実際にあるのかどうか、毎年、現物と全て突合せをしているわけではありません。ましてや経理担当者や顧問税理士が変わると、その資産が何を指しているのか内容不明のまま残っていたり、逆に資産に計上すべきものが正しく表示されていなかったりというケースが、十分に考えられます。

現金・各部署で管理している現金の実際の残高合計値と、試算表上の現金残高は一致しているか
・誰の管理下にもない現金が、試算表に表示されていないか
前払費用、出資金・相手先不明のものが残っていないか
書画骨董品、美術品、その他の固定資産・それぞれがどの資産を指しているのか把握しているか
敷金、保証金・解約した契約のものが残っていないか
・現在契約している相手先に対するものが全て表示されているか

例えば上記のような観点で、自法人の資産をチェックしてみてください。「科目内訳書」と「減価償却明細書」を見て頂ければ、確認できるはずです。もし該当がある場合は、その経緯などを調べる必要があります。

病院決算書の読み方「最初の10分で確認する決算書の重要ポイント」

医業未収入金は、本当に回収できるものなのか

貸借対照表でもう一つ確認いただきたいのが、「医業未収金」です。医業未収入金は、大きく2点の注意が必要です。

1点目は、患者様が負担する医療費です。貸借対照表には医業未収金が表示されていますが、その中に、回収見込みがない方の額が含まれていないでしょうか。例えば数年前に一度来院してから現在まで連絡がつかないものをそのまま放置していると、本当は回収できないのに、財産として計上されていることになります。

2点目は、公的機関(支払基金や連合会)に請求する医療費です。公的機関に請求した後、毎月どの程度返戻され、再請求しているのか。また再請求したものがきちんと入金されているか。中には請求担当者が返戻されたものを再請求していなかったという事例や、再請求したものの法人に入金されておらず、収益に反映されていないといった事例もあります。

貸借対照表には、その時点でのプラスの財産(=資産)とマイナスの財産(=負債)が掲載されています。それをそのまま鵜呑みにするのではなく、実際に法人に残っているのか、是非とも確認して頂きたいと思います。

執筆者/日本経営ウィル税理士法人 菅谷美紅

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本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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